2019年度前期のスケジュール

日時:毎週木曜日、12:25-13:10

場所:L206

第1回 4月25日(木)

(今学期の発表者のスケジュールを決定)

第2回 5月9日(木)

多文化共生の観点から考える外国人技能実習生への日本語教育
(藤田航輝、M1)

 近年、在留外国人の数が増加傾向にあることが知られている。生活者としての外国人がより身近な存在になっている今日、我々日本人も、異なる文化を持つ人々を受け入れ、認め合いながら共に暮らしていく姿勢を持たなければならない。日々の暮らしの中で困難に直面したときや災害時など、彼らへの言語支援の必要性も高まっているが、それぞれバックグラウンドが異なるため、彼らが最低限必要としている日本語能力も人それぞれだ。今回は、マスメディアなどで取りあげられることの多い「外国人技能実習生」に焦点を当て、彼らの受ける日本語教育の実態を把握した上で、日常生活で直面する問題点や日本人との関わり合いの中で生じる困難などから、多文化共生社会の実現を目指しよりよい日本語教育の在り方を探っていく。

第3回 5月16日(木)

高習熟度の学習者における非対格動詞の受け身文の過剰生成エラー、実験手法について
(森山湧二、M1)

言語習得を行う上で、ネイティブスピーカーが習得する際には犯さないようなエラーが第二言語学習者においてみられるという現象が存在することは珍しくない。その例の一つが、日本人英語学習者が英語の自動詞を習得する際に過剰に受け身文を生成してしまうというものである。先行文献において、高習熟度の学習者においてもエラーが見られるという実態はあるものの、なぜそうしたエラーが起きるのかという原因が明かされていない。先行研究の実験手法をいくつか概観し、問題点や自身において何が必要なのかといったことを皆さんと議論したい。

第4回 5月23日(木)

JSL留学生のWTCと就職希望地の関係性について
(楊捷、M1)

Willingness to communicate(以下はWTCと略す)とは「ある状況で第二言語を用いて自発的にコミュニケーションをしようとする意思」である。人手不足の問題を解決するための留学生受け入れ政策は受け入れ人数に関しては大成功を収めるものの、留学生の日本での就職率は高くない。先行研究によると、WTCの高い学習者は日本語能力が高い傾向がある。また企業側は留学生の日本語能力に重きを置く。もし本研究でWTCと就職希望地の間関連のあることが証明できれば、WTCを涵養することで、留学生の日本での就職する意欲が増えることが予想できる。日本企業の人手不足問題の緩和と日本政府の目標である留学生の日本での就職拡大の達成につがなる。

第5回 5月30日(木)

時代の変化に伴う翻訳への影響
(村上靖道、M1)

機能主義的翻訳理論から始まる現代の翻訳理論において言語学的アプローチと同様に文化学的アプローチも重要視され、翻訳を決定する要素として「文化」やその背景に存在する「社会」などもその論の範疇として論じられている。しかしその実、近年急速に変化する社会情勢や技術革新の伴う文化交流の活発化などによって社会や文化、そしてそれらとの向き合い方が以前とは大きく変化してきているにもかかわらず、その時代の変化を考慮して翻訳について論じられている論文は決して多くない。このことを踏まえ、時代の変化によってどう翻訳が変化しており、それは社会のどういう変化に起因するものなのかを明らかにしていきたい。

第6回 6月6日(木)

映画タイトルの4言語間比較
(村上永里子、M2)

 パラテクスト(paratext)とは「テクストに伴う生産物」(Gérard Genette, 和泉涼一訳)である。パラテクストには、テクスト以外の要素全てが含まれる。たとえば、映画の場合、テクスト(text)は本編を指し、パラテクストはタイトル、宣伝用ポスター、予告編、監督や俳優、主題歌や挿入歌などが当てはまる。映画が外国に輸出される際、映画の本編であるテクストには多少の内容変更はなされることはあるが、大幅にストーリーなどが変わることはない。しかし、映画のパラテクストは各言語文化内で「受け入れられやすい」形に変わることが多々ある。どのような映画パラテクストが大衆に「観たい」と思わせるものになっているのかを、各言語のパラテクストを比較することで明らかにする。本研究では、英語、日本語、韓国語、中国語の4言語間における映画タイトルの翻訳手法を比較し、各言語の翻訳の特徴を探る。

第7回 6月13日(木)

短期留学生の異文化交流とその効果
(三井絢子 、M1)

 国際化の流れによって日本で生活・就労する外国人が増え、日本人は異なる言語・文化を持つ人々と接する機会が増えてきた。以前より大学という機関は、留学生として外国籍の学生が在籍することが普通であったが、近年短期留学生の受け入れが急増している。その要因としては、2018年より18歳人口が減少していくという、いわゆる大学の2018年問題に対処するための大学の方針である。しかし、体制が整っていないまま受け入れを進めることで、現場では様々な問題が発生している。実際に来日後の留学生から、不安や困難を感じているという相談を受けることが多い。来日後の留学生の生活をより良いものにするためには、どのような支援ができるだろうか。 相談の1つに日本人との交流が難しいという声がある。きっかけが見つけられず、十分に交流できないまま帰国してしまう留学生もいる。その対応として、自身の職場で異文化交流を目的とした活動を行っているが、日本人学生との交流は思うように進められていない。そこで留学生と日本人学生との異文化交流の活動のあり方を考えるため、異文化交流活動について調査し、交流促進の方法や問題点、効果的な活動や効果を明らかにしたい。

第8回 6月20日(木)

日本語における二重否定表現に関する一考察
(崔艶鵬、M1)

日本語の二重否定表現の中には、形式が類似していながら、意味が異なるものが存在する。例えば、「は」と「では」が異なるだけで、「知らないわけはない」は必ず知っているという意味になるが、それに対して、「知らないわけじゃ(では)ない」は多少知っていることもあるという意味になる。このような、形式の類似、意味の差異性は二重否定表現の理解・習得を困難にしている一つの要素であると考えられる。また、二重否定表現は、定義が定まっておらず、研究者の研究成果も散在しており、その研究成果を言語研究、日本語教育において十分に応用することが難しい状況である。そこで本研究は、日本語教育の立場から、二重否定表現に所属する各形式をまとめた上で、類似性及び相違点を明らかにし、日本語学習者に多様な二重否定表現を使えるための指導上の留意点を示すことを目的とする。

第9回 6月27日(木)

【休会】

第10回 7月4日(木)

三者会話場面におけるJSL中国人日本語学習者のコミュニケーション・ストラテジー使用に関する一考察
(韋恩琦、 M2)

コミュニケーション・ストラテジー(CS)は一つのコミュニケーション能力とアウトプット能力として、学習者が自分の言語能力の不足を補ってコミュニケーションを達成するために用いる方略であり、アウトプットの一つである。 ネウストプニ―(1981)は「接触場面」について、「日常生活の営みから特殊な場面までの広い範囲で、その中には他の参加者の特徴、行動のパターン、目標と組織の構造行動の結果などが入っている」と定義し、すべての学習者が目標言語を母語話者レベルまで達するわけではなく、むしろ接触場面に参加するが殆どであるとし、この接触場面こそ分析すべきであると主張している。そして、大場(2013)はネウストプニ―(1981)を踏まえて、通常の「二者会話接触場面」だけでなく、「一人の話し手に対し二人の次話者候補が存在し、現在の聞き手は次に話し手の役割となることは保障されていない」という「三者会話接触場面」の定義を取り上げた。 以上の先行研究を踏まえて、日本語母語話者及び学習者を研究対象とし、それぞれの二者会話接触場面におけるCSの使用特徴の研究が多く見られるが、本研究は従来の先行研究と異なって、三者会話接触場面に焦点を当て、JSL(第二言語環境)中国人学習者のCSの使用に関する考察を試みていきたい。

第11回 7月11日(木)

日本語学習者による初級文法の時間節の使用実態―中国語・韓国語を母語とする学習者の場合―
(甯宸、M2)

初級で導入される日本語時間節の誤用・多用が、日本語学習者の日本語レベルを問わず見られる。学習者にとって初級の時間節の習得が難しいと言える。修士論文では、初級で現れる日本語の時間節について、日本語学習者がどのように使用しているのかを調査して考察を行った上で、今後の指導のための基礎資料を得ることを目的とする。学習者の使用実態を考察する際、話し言葉・書き言葉別、日本語能力別、母語別の3つの視点からの比較を行う。今回の発表では、本研究の目的、研究方法、予備調査の分析結果について報告する。 まだ量的分析の途中ですので、研究方法、統計手法について皆様のご意見を頂ければと思います。

第12回 7月18日(木)

日本人英語学習者の英語の未来表現の理解について
(小前勇悟 、M1)

英語の文法では、過去形においては-edのような明示的な印が動詞に現れるのに対して、未来の表現については動詞に明示的な印が現れない。そのため、英語には未来時制はないとされているが、日本の教育現場では未来時制の概念を使うのが一般的である。 英語の未来表現としては現在形や現在進行形、willやbe going toなど様ざまであるが、各表現ごとに大小問わず意味の違いが存在する。しかし、日本の教育現場ではそれぞれの違い(特にwillとbe going to)について問われることはなく、統語的観点からも、実際の生活場面でこれらを使い分けることは難しいと考えられる。 本研究では、日本人英語学習者がこれらの表現を使い分けられるかということと、その原因を探っていきたい。

第13回 7月25日(木)

日本人英語学習者が場面に応じて使用する依頼表現の使用実態調査
(藤永笙子、M2)

日本における英語教育場面では、語彙や文法に関する学習に焦点が当てられているように感じる。しかし、第二言語(英語)を用いた「コミュニケーション」(言語運用)が注目を浴びている現在、語彙や文法だけではなく、語用論に関する学習が不可欠であると考える。そこで、本論文では実際のコミュニケーション場面で頻繁に行われる「依頼」に着目し、日本人英語学習者が場面や相手に応じて使い分ける依頼表現について調査し、分析する。